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7th album「ポルノグラフィティ」【ポルノグラフィティ全作レビュー#32】


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はじめに

こんばんバス!

今日はこのアルバムについて、とっても正直にお話しします!

ポルノグラフィティ」作品情報

Title: ポルノグラフィティ
Release date: 2007/8/29

Tracks:
1. リンク
 作詞:岡野昭仁 作曲:岡野昭仁
2. 空蝉
 作詞:岡野昭仁 作曲:岡野昭仁  
3. ウォーカー
 作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一
4. ベアーズ
 作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一
5. 農夫と赤いスカーフ
 作詞:新藤晴一 作曲:ak.homma  
6. 鉄槌
 作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一
7. Light an Shadow
 作詞:岡野昭仁 作曲:岡野昭仁
8. My 80's
 作詞:岡野昭仁 作曲:新藤晴一  
9. ロックバンドがやってきた
 作詞:新藤晴一 作曲:ak.homma
10. Please say yes, yes, yes
 作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一  
11. そらいろ
 作詞:岡野昭仁 作曲:岡野昭仁

全編曲:ak.homma, ポルノグラフィティ

オリコン週間ランキング初登場: 2位(最高位)
累計売上枚数:18.0万枚

作品概要

前作「m-CABI」から9ヶ月というポルノにしては短いスパンでリリースされたアルバム。
直前までアリーナツアー"OPEN MUSIC CABINET"をやっていて、7月にはリードシングルとして「リンク」をリリース、その翌月に本作をリリースということで、この年はなかなか忙しかったですね。

デビュー8年目にしてリリースしたセルフタイトルのアルバムとなります。
もともとポルノグラフィティというバンド名がエクストリームのアルバム「Pornograffitti」に由来していて、そのポルノグラフィティが「ポルノグラフィティ」というタイトルのアルバムを出すというややこしい状況になっています。
と言っても、内容はエクストリームの「Pornograffitti」とは大違いですけども。

本作は、11曲中9曲をメンバーが作曲しており、これまでのアルバムに比べてメンバー作曲の割合が高くなっています。
アレンジは基本的に本間さんがしていますが、それ以前に2人だけでベーシックアレンジをしており、メンバー2人だけで作品を作り上げることに今まで以上にこだわっていることがわかります。

正直な感想を先に言っておくと、このアルバムの第一印象はそこまで良くはありませんでした。
良くも悪くもポルノグラフィティだったという印象です。
本間さんの作った曲でファンになった人には、少しとっつきづらいというか、純粋に2人の音楽性に興味を持っている人でないと、それまでのポルノグラフィティのイメージを覆されたような気持ちになる作品ではないかと思います。

このアルバムを受け入れられるかどうかで、ポルノグラフィティのファンを続けられるかどうか決まると言っても過言じゃないと思います。

特に前作の「m-CABI」が非常にポップでバラエティに富んでいてわかりやすいアルバムだったので、そこからのギャップに私は戸惑いました。

まじかぁ……思った以上にポルノグラフィティ丸出しやん。と思いました。
それはそれでタイトルに偽りなしなのでいいんですけどもね。

かなりのクセモノがいますので。とりあえず1曲ずつ見ていきましょう。

全曲レビュー

「リンク」

www.youtube.com

唯一のシングル曲。
この曲自体は、シングルとしてはちょっと弱いなと思っていましたが、このアルバムの1曲目に持って来られると、やはりこれはシングル曲だなと思う。

「リンク」についてはこちらの記事をご覧ください。

factorial.hatenablog.jp

「空蝉」

The 岡野昭仁 な1曲。最初のクセモノですね。
勢いだけで突き進んでサビで一気に落とすという。
最初聞いたときはズッコケそうになりました。
終盤のオーオー言ってるくだりはちょっときつかったですね。
これはポルノの悪いところが出ちゃってるぞ!と思いました。
何というか、いまだにこの曲を聴いて何を思えばいいのかわからない、そんな曲です。
ギターだけは終始かっこいいですけどね。

「ウォーカー」

これは好きでもないけど、嫌いでもない、憎めないやつ的ポジションな曲です。でもクセモノ。
昭仁は晴一曲の中で一番気に入っているそうですけど、それは何となくわかります。ボーカル冥利に尽きるとのこと。  
イントロのギターはかっこいいですよね。

歌詞も晴一らしさを感じれる部分がいくつかあって、特にBメロですかね。

ジャムの蓋の値札みたいに むりやり
ギィと爪で引っ掻いて剥がしたって粘ついた痕が無様

ジャムの値札は意外と綺麗に取れるイメージがありますが、何となくわかります。
新しく買った食器の裏についてる値札のシールとかの方がより厄介ですよね。

賞味期限が切れる夜の0時に
ミルクには何が起こるんだろう 致命的ななにごとがか

ミルクは賞味期限ではなく消費期限なんですけどね。
確かに、消費期限が切れるその瞬間なんて、本当はまだ飲めるだろうとは思います。
致命的何事かがその一瞬で起こっているわけではないとは思うのですが、誰もが一度は疑問に思ったことがありますよね、きっと。

"続・ポルノグラフィティ"で披露されたのは意外でしたが、時間を置いて改めて聞くと、割とすんなり入ってくるというか。

タイトルが「ウォーカー」なんですよね。
歩いていく人ということですが。

かつての自分との約束を思い返しながら、その夢にちゃんと向き合おうか、逃げてしまおうかという、どちらかというとこれからの歩みを迷っている人の歌のように聞こえます。
晴一は過去の自分の約束を思い返すのが本当に好きだなぁと思います。
きっと、昔自分が思い描いた将来の自分と、今の自分を比べながら、そのギャップをひしひしと感じながらも、どうにか理想に近づくために歩み続ける人の歌なんでしょうね。
そういう意味では、希望の歌ですし、"続・ポルノグラフィティ"で披露されたのも納得です。

「ベアーズ」

断言します。「ベアーズ」はこのアルバムの中で一番の名曲です。大好きです。

この曲はラジオで先行公開されて、僕はそれを聴いてアルバムへの期待が膨らみました。
これはポルノグラフィティがんばってる!!
すごく夏だし、すごくポップだし、アレンジはシンプルだけどもポルノらしい夏をやってるなと。
歌うと結構難しいんですよね。最後の転調した後とか特に。高い。

歌詞もいいんですよ。

駆け引きだって君の方がうんと上手だからね
目を閉じてスイングした 力任せに愛してみたかった

ここがめちゃくちゃ切ない。

自慢じゃないけど そりゃ僕は他の誰かと比べて
特別なとこなんてない ママチャリのような男だけど
頑丈で壊れ養い愛をいつでも君へと
逆に言えば盗まれる心配さえないんだから その点は安心して

確かにね、ママチャリは個性はあまりないけど丈夫ですよね。
ただ、ママチャリは意外と盗まれますよ。
高級なマウンテンバイクとかばかりが盗まれると思っているかもしれませんが、田舎の駐輪場で盗まれるのは特別なとこなんてないママチャリですよ。
コンビニで買ったビニール傘が盗まれるのと同じ要領で盗まれます。

自分のことをママチャリに置き換えてアピールできる男は新藤晴一くらいしかいないのでは?

少しでいいから僕のもんって君を感じていたくて
乱暴だって痛がっても力任せに愛してみたかった

ここが特に好き。
「少しでいいから〜」のところ。
わかる。わかりすぎる。

ベアーズは青春。

「農夫と赤いスカーフ」

なんで農夫を主人公にしようと思ったんだろう、当時高校3年生の僕は疑問でした。

ストーリーは非常にわかりやすいんですけど。

農夫は"彼の女"と別の道を選んだんですよね。
"彼の女"は都会で暮らすことを選び、農夫は地元で農夫として働くことを選んだんでしょう。

きっとその選択には後悔はないんだと思います。

 この地で咲く彼には

とありますから、きっと彼の生活は充実していて、自分らしい生活ができているのだと思いますし、

燃える夕陽と赤いスカーフが

そして

都会から
届いた
赤いスカーフが

とありますので、きっと"彼の女"からもらったんですよね。
それを今も身につけて自分のやるべき仕事に取り組んでいる。

今2人の関係がどうなっているのかはわからないですが、別々の場所で生きていることを納得しているし、心から受け入れているように感じます。

農夫と"彼の女"が何歳くらいなのかとかも気になりますが、お互いの人生を尊重できるくらいにはきっと大人なのでしょうね。

「鉄槌」

これもね、晴一らしい、何とも言えない曲ですよ。クセモノです。

初めて聞いた時はとにかく暗くて地味な曲がきたなと思いました。
正直言って、好んでこの曲を聞くことはないです.

テーマとしては

身に覚えのない罪が暴かれる裁判

ということが表しているように、自分に身に覚えのないことで批判されたり、不当な評価をされることに対する不満というか憤り的なものを歌っているんでしょうけどもね。
そういう意味ではロックですよね。
社会に蔓延るおかしなことを見逃しはしないぞ、という精神。ロックですよ。

ただ、当時の僕としては、この曲はポルノに求めている音楽ではなかった。
もちろん、それまでの「音のない森」や「渦」のように、ライブではこういうじめっとした重めの曲が必要だなぁとは思いましたが。

こちらも"続・ポルノグラフィティ"で披露されていて驚きました。

最初に参戦したのは福岡公演1日目だったのですが、その時僕の斜め前にいたファンの方が、この曲のイントロ聞いた瞬間すごく驚いていたんですよ。 口元に両手を当てて「うそぉ〜っっ」みたいな。もちろん声は出してませんが。
ここ数年見た中で最も模範的な驚き方でした。
驚いていたというのは意外っていうことだけじゃなく、まさかこの曲をやってくれるなんて、嬉しい的な。
後ろ姿だけで表情は見ていませんが、きっと泣くほど嬉しかったんじゃないでしょうか。

僕はその姿を見て、「この人は生粋のポルノファンだな」と思いました。
何というか、我々ポルノファンはこういう曲を受け入れ、乗り越えてきたんだよなと。
ある意味クセがすごいメンバー曲に、時に戸惑いながらも、その音楽性もポルノなんだと受け入れ、僕らはもう23周年なんだと。
そのファンの方の後ろ姿に僕は感動しました。

「Light and Shadow」

これはいい曲!
これもラジオで先行オンエアされたんですよね。確かオールナイトニッポン

この曲と「ベアーズ」が先に披露されたもんだから、アルバム「ポルノグラフィティ」に対する期待がすごく膨らんだんですよ。

「お、今回結構いいアルバムなんじゃね?」

とさえ思いました。

普通にいい曲ですよね。アレンジもかっこいいし。
きっとストリングスを入れ込んだのは本間さんだと思いますけど。

タイトルの「Light and Shadow」を見たとき、ちょっとだけ「Devil in Angel」を思い出しました。
似たものとか反対のもの並べるの好きですよね。「Free and Freedom」とか。

ただ、歌詞の内容はよくわかってないです。
好きだったし、何回も聞いていますけど。

キスなんて無駄なのさ 心が濡れていない

が小っ恥ずかしくなるほどかっこいいですけどね。

なんでしょうね、この人はきっとまだ飛び立ってないことだけはわかります。

昭仁にありがちな、答えのないことに悩んで立ち止まってる系ソングなのでしょうか。

「My 80's」

いや、クセがすごい!!!

晴一も言ってましたが、この曲はなんでこうなったんでしょうか(笑
C-C-B的なアレですよね。
わかりますよ。彼らもポップでロックでキャッチーな曲歌ってましたけども。
まさかその路線に臨んでいくとは。

昭仁がひたすらファルセットで80年代の思い出を語りかけてくるAメロがシュールすぎるでしょ。

なのにサビはいきなりかっこいいんですよ。

俺とあいつとあの娘とあの場所に残したは一生もんだ

のところ、特に「あいつとあの娘」がカッコ良すぎる。

そしてこの曲といえば、岡野昭仁と井口理がコラボした「MELODY(prod.by BREIMEN)」のレコーディング映像で、突然に井口くんが発したことでファンは驚きましたね。

「My 80'sの時みたいな裏声で歌ってみたら」というようなディレクションをしていて、これは完全にファンしかできないディレクションだなとなっていました。
ファンでもできない可能性がある。
井口くんはすごい。

「ロックバンドがやってきた」

これは次の「Please say yes, yes, yes」に向けて、今からロックバンドのライブが始まるんだぜ!的な、エピローグ的な楽曲だと思ってます。

RHINOCEROS」で言うところの「螺旋」です。

「Please say yes, yes, yes」が、いかにも晴一が好きそうな、コールアンドレスポンスで盛り上がるぜイェイイェイ的な楽曲なんで、それに向けて、ロックバンドが来るよ!楽しみだね!テンション上がるね!っていう曲を持ってきたんじゃないかなと思ってます。

これも地味にクセモノです。

「Please say yes, yes, yes」

もう普通に良い曲。
こういうのでいいんだよ、と言いたくなる。

見たことのない創作料理のコースの最後に、締めで梅茶漬けを出されたような気分です。
あぁ、こういうのでいい〜と。

いいじゃないですか。
ノリノリなイントロ、適度に入るコールアンドレスポンス、そしてサビでのクラップ。
こういうポップでロックでキャッチーな曲を聞きたかったんだよと思いましたね。高3の僕はね。

この曲を「ジレンマ」に変わるライブの定番にしようとしたこともありましたが、やはりファンが求めていたのは「ジレンマ」なんだと判断してやめたのだと思います。

この曲もいいんですけどね。何なら単純に曲だけでいうと僕はこちらの方が好きですけども。
きっと、ファンのDNAに「ジレンマ」が刻まれ過ぎてたんだと思います。

でもそういう風に、自分達の定番を覆していこうとすること自体はとてもロックですよね。
定番は大事だけど、そこにあぐらをかかないというか。
常に新しいものを届けていこうという、ポルノグラフィティの誠実さが感じられる曲だと思っています。

「そらいろ」

正直に言いますね。この曲、初めて聞いた時、サビがどこだかわかりませんでした。
ポルノの曲の中に、いくつかサビのない曲があるのですが、これはその1つです。

ここからサビに行くのかなぁと思ったら間奏が来てもう一回Aメロがきた時に全てを察しました。

ここに込めたメッセージとかは、ライブのMCでのエピソードを聞いて、なるほどと、心に染みるものがあります。
僕も地元を離れて少し遠い場所で暮らしたりしているので。地元に友達はあまりいませんが。

ただ、曲自体は先ほども言ったように、サビがないなと思ってしまったのであまり好きではないです。
メンバーにはきっと思い入れのある曲だから、ベストアルバム(ACE)にも収録されたのですが、個人的には納得いきませんでした。
それなら「Light and Shadow」を入れてくれよと思いました。

先日の「SONGS」でも披露されていました。奇跡的に番組協力に参加できたので、あの演奏は生でも聴きました。
それ自体は嬉しかったですが、せっかくテレビでやるのなら他の曲もあったのでは?と思ってしまいました。
番組からの提案だったということで、そこまでいろんな曲を聞いてくださっているのは嬉しいことですけれどもね。

この曲を高く評価しているファンの方が多いようで、私のような意見は少数派なのだとは思います。
この曲が嫌いというわけでは全然ないのですが、あまり好んでは聞かないな、という楽曲です。

付属のDVDに収録されているインタビューで晴一が

いつでも見上げる空色はふるさと

という歌詞に対して、「そこで最後に持ってくる言葉が"ふるさと"なんだと思った」という若干のツッコミを入れていたのが印象深いです。

おわりに

はい、このアルバム「ポルノグラフィティ」に関しては、今まで以上に、素直に思ったことを書かせていただきました。

このアルバムを聴いたとき、高3の夏でしたけども、「ファンとして試されてるな」と思いました。
これが紛れもなくポルノグラフィティの音楽だし、彼らの音楽性そのものだし、今のポルノグラフィティなんだということを突きつけられている気がしました。
それをどう受け止めるのか。
その姿勢を問われているような気がしましたね。

このアルバムには本間さんも曲を提供していますが、でもうっすらと、その先に本間さんのいないポルノグラフィティが見えた気がして。

岡野昭仁新藤晴一という意味でのポルノグラフィティをどう受け止めるのか、すごく考えさせられた作品でした。
私は、紛れもなく、本間さんが作った曲のおかげでファンになりましたからね。
あの頃のポルノグラフィティでいてくれよ、という気持ちと、新しいポルノに対する期待とが混じっていた時期だと思います。
おそらくメンバー自身も、その葛藤を抱えていた時期だとは思いますが。

僕は、ファンになったばかりの人にはこのアルバムはあまりお勧めしません。
「ロマンチスト・エゴイスト」とか「RHINOCEROS」とか、ちょうどいいのがありますから。

でも、必ず通ってほしい道だとは思いますね。



現時点で最後のライブハウスツアーです。