11th single「音のない森」【ポルノグラフィティ全作レビュー#29】
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はじめに
こんばんバス!
8月6日は、ポルノグラフィティの歴史の中でもかなり特殊なシングルがリリースされた日です。 早速いってみましょう!!
「音のない森」作品情報
Title: 音のない森
Release date: 2003/8/6
Tracks:
1. awe
作曲:岡野昭仁 編曲:ak.homma
2. 音のない森
作詞:岡野昭仁 作曲:岡野昭仁 編曲:ak.homma, ポルノグラフィティ
3. sonic
作曲:岡野昭仁 編曲:ak.homma
オリコン週間ランキング初登場: 5位(最高位)
累計売上枚数:7.6万枚
作品概要
3曲中2曲がインストというそれまでにない新しいスタイルに挑戦した作品。
作曲は全て岡野昭仁が手がけており、シングル曲を全て1人のメンバーが担当するのは初めて。
このシングルのリリースによるプロモーションは行われていない。
2003年後半はこのシングル以降、9月に「メリッサ」、11月に「愛が呼ぶほうへ」、12月に「ラック」を連続してリリースした。
リリースラッシュの1作目とも言える作品ではあるが、当時のポルノにしては売上枚数も少なく、ファンでない人にはほとんど知られていないシングルである。
全曲レビュー
「awe」
読みは「おー」、というかむしろ「あー」。
「畏れ」や「畏怖」、「畏敬」などの意味がある。
「音のない森」への前振りにあたる曲なのですが、静かな森に迷い込んでしまった時の恐怖感みたいなものが感じられます。
音かずも非常に少なく。
シンセが盛り上がってきたところで、心臓音のような音だけが残り、「音のない森」へとつながります。
昭仁が作曲で、本間さんが編曲になっているんだけど、昭仁は一体どこまでを作曲したんだろう。
そして本間さんはどれくらい手を加えたのか気になります。
「音のない森」
この曲は結構ギターサウンドが重厚ですね。
イントロのリードギターも印象的ですし、バッキングのギターも非常に厚みがあります。
またAメロBメロではアコギの音も聞こえます。
この曲が何を表現しているかと言われたら、一言で表すのは難しいですが。
誰もが通りゆく森、暗く湿った深い森はきっと人生で誰もが一度は通るであろう迷いや、悲しみや苦しみみたいなものを表しているのかもしれませんね。
この頃のポルノはメジャーデビューから4年目、ヒットを積み重ね知名度も上がっていく一方で、本間さんの曲で有名になったことや、自分達が当初思い描いていたロックバンドとは少し違う方向に進んでしまっていることに悩んでいた時期かもしれません。
メンバーもシングル曲を作ってはいましたが、その頻度は少なかったですし(この時点では「サボテン」「幸せについて本気出して考えてみた」「渦」)、メンバーが作ったシングルの時だけわかりやすく売り上げが下がるという中々厳しい状況でした。
やはり当時のポルノグラフィティは本間さんの楽曲によって作られたポップでキャッチーなイメージが大きかったですし、それと比べると若干キャッチーさに欠けるメンバーの楽曲はファン以外の人にはなかなか受け入れてもらえなかったのが現実だと思います。
そんな中でこの2003年は2月に「渦」をリリースし、半年後の8月には「音のない森」を、しかもプロモーションなしでリリースするというかなり攻めた活動をしていました。
ミュージシャンにとって、世間のイメージとかけ離れた楽曲をリリースするのは新しいファン層を開拓できるチャンスでもありますが、その分リスクでもあります。
だって「最近のポルノ微妙じゃね?」って思われて既存ファンが離れるかもしれないわけですからね。
それでもポルノが2003年前半に「渦」、「音のない森」と言うかなりディープな曲をリリースしたのはそれなりの理由があると思います。
1つはその後に大型タイアップの楽曲が控えていたこと。
「音のない森」で世間にアピールできずとも、もしくは既存のファンの期待に応えられなかったとしても、その後に9月には「メリッサ」のリリースが控えているのでそこで十分世間にアピールできると考えたのではないでしょうか。
「メリッサ」はアニメ「鋼の錬金術師」のOPテーマでしたから、アニメ視聴者を新たに取り込める可能性も十分あります。実際この曲でポルノに興味を持ってくれた人も多かったと思いますし。
11月には「愛が呼ぶほうへ」のリリースが控えており、こちらはドラマ「末っ子長男姉三人」の主題歌でした。
こちらもTBSの日曜9時という人気の枠ですし、深津絵里と岡田准一のダブル主演という話題性のあるドラマでしたから、その主題歌ともなれば十分世間にアピールできるはずです。
これら2作のリリースがおおむね最初から計画にあったからこそ、8月に「音のない森」をリリースできたのではないかと思います。
そして僕が思うもう1つの理由は、こういうメンバーが作るポルノグラフィティのサウンドを少しずつ世間に広めていくことが大事と考えていたから、というものです。
もともとポルノのメンバーは自分達で作った曲で勝負したいと思っていたはずです。
でもいろいろな経緯から本間さんの曲で勝負することになりました。
それでも、これから長期的に活動していくことを考えると、アルバム曲だけでなくシングル曲でもしっかりメンバーの曲を打ち出していくことが大事と考えたのではないでしょうか。
ポルノはこういう音楽性もあるんだよ、というのを少しずつ発信することで我々ポルノファンも、あぁ、ポルノってこういう曲もやるんだなっていうのを理解していったし慣れていったと思うんですよ。
本間さんはもちろん優秀な作曲家ですが、将来的にはポルノのメンバーが自分達で舵を切れるようにならなければならないという、チーム内ので共通認識が多少あったのではないかなと思います。
実際、僕自身も時折リリースされるメンバー作曲のシングル曲や、アルバム曲を聴いて、本間さんが作ったイメージとは違うポルノグラフィティのイメージが出来上がっていった気がします。
メンバーが作る曲の良さであったり、クセであったり、時には拙さみたいなものもあると思いますが、そういうの全部ひっくるめてポルノグラフィティなんだと受け入れることができたのは、3人時代から地道にメンバー作曲の楽曲をリリースしていたからだと思います。
短期的なヒットだけを目的とするのであれば、本間さんの作る売れ線楽曲を連発すればよかったのだと思いますが、長期的な目線で見るとこの「音のない森」や「渦」のような、ディープでマニアックな曲も間違いなく必要で、このタイミングでリリースする必要があったんだと思います。
ということで、この曲そのものについてというより、この曲がリリースされたことの意義について主に語ってしまいました。
この曲の一番好きなところは、最後の静かになったサビ
僕たちはまだ森の中 抜け出そう 陽の当たる場所へ
の最後の「へ」ですね。
ここを聞くためにこの曲を聴いていると言っても過言です。
「sonic」
「awe」と比べると少し明るい雰囲気があります。
おそらくですが、「音のない森」の最後で
僕たちはまだ森の中 抜け出そう 陽の当たる場所へ
と言っているので、きっと抜け出してはいないが、出口はなんとなく見えてる、くらいの場所にいるんじゃないかと勝手に思っています。
おわりに
このシングルはかなり特殊な構成になっているので、なかなかシングルを通して聞くことはなかったです。
実際、自分のiPhoneにもシングルとしては取り込んでいないことに、この記事を書こうとして気づきました。
リリース以来、19年ぶりにまともに聴いた可能性もあります。
さて、次回は久しぶりにアルバムを紹介します。
お楽しみに!!
「音のない森」ってこれ以来、ライブで披露されてないのでしょうか?