はじめに
こんばんバス!
8月3日にポルノグラフィティのニューアルバム「暁」がリリースされました!
今日はこのアルバムを紹介していきたいと思うのですが、普通にレビューしても面白くないので、SpotifyAPIを使って取得できる楽曲データを使って、過去のアルバムと比較してみたいと思います。
このアルバムがポルノの作品の中でどういう立ち位置にあるのか、ということをデータ分析して探っていきましょう。
Spotifyから楽曲情報の取得
Spotifyは日本でも有名な音楽サブスクサービスですね。
Apple MusicやAWAなど、さまざまな音楽サブスクサービスがある中で、Spotifyの特徴的なところは楽曲に紐づくさまざまな情報を公開していることです。
例えば、「アゲハ蝶」という曲があったときに、この曲に対してアーティスト名の「ポルノグラフィティ」や、リリース日などの基本的な情報の他に
- メジャーキー or マイナーキー
- 演奏時間
- テンポ
などの情報が記録されています。
これだけならまぁ普通なのですが、それ以外にも
- Acousticness(アコースティック感)
- Danceability(踊りやすさ)
- Energy(活発さ・激しさ)
- Instrumentalness(ボーカルの量)
- Liveness(ライブ感)
- Speechiness(スピーチ感)
- Valence(ポジティブさ)
などの値が登録されています。
おそらく音源から機械的に算出された値だと思いますので、実際に人間が聴いた感覚とは若干異なる部分もあるかとは思いますが、一つの楽曲や、アルバムを要約するには十分な情報量です。
今回は、Spotifyで公開されているポルノグラフィティの全楽曲について、上記の情報をSpotify APIを使って取得しました。
すでにネットではAPIを使って楽曲情報を取得した方々の記事がたくさん公開されていますので、参考にさせていただきました。
Pythonを用いて情報を取得し、その後の可視化はPower BIで行っています。
*アルバム・シングルなど複数の作品に収録されている楽曲は基本的に最初にリリースされた作品に収録されている音源のデータのみ取得しています。
同じ楽曲でもアルバム収録時に、曲の演奏時間や、リマスタリングによる音の響きに違いがあるため、厳密には違う値になってしまうのですが、簡略のため楽曲タイトルが同じ場合は最初にリリースされた音源の情報のみを扱っています。
検証内容
今回のニューアルバムですが、いろいろなインタビューでメンバーの2人は
トーンが暗い曲が多い
という趣旨の発言をされていました。
今の時代に、無理に明るい曲を作るのも違うと思ったというようなこともお話しされていました。
明るい曲ばかりではないけど、その中にこれから先に繋がる希望を見出してもらえたら嬉しいなという、ポルノらしい想いが込められている作品です。
ということで、今回はSpotifyが公開しているデータを使って、本当に今回のアルバムはトーンの暗い曲が多いのか?ということを過去の作品と比較して検証したいと思います。
アルバム「暁」と過去作品の比較
収録時間
1枚分の長さ
まずアルバム1枚分の収録時間を見てみましょう。
『暁』の収録時間はは15曲で63.1分となりました。
歴代では3番目の長さです。
ポルノのオリジナルアルバム過去11作の平均収録時間は58.7分なので、平均よりも長いことになります。
今回はシングル曲6曲と、新曲9曲というかなりボリュームの内容なので、収録時間が長いのも頷けます。
ちなみに1番短いのは7th『ポルノグラフィティ』で45.5分でした。
11曲で45分という凝縮された時間にこだわったと言っていましたね。
1曲あたりの長さ
次は1曲あたりの平均演奏時間を見てみましょう。
アルバムの収録時間が長いからと言って1曲の演奏時間が長いわけではありません。
収録曲数に依存します。
アルバム『暁』の1曲あたりの平均演奏時間は4.2分でした。
過去11作の1曲あたりの平均演奏時間は約4.3分でしたので、大体いつも通りの長さと言ったところでしょうか。
ちなみに1曲ずつの演奏時間は以下の通りです。
「ブレス」「証言」「フラワー」が5分を超えている一方で、4分未満の曲が5曲もあり、中でも「バトロワ・ゲームズ」が2.8分と異様に短いため最終的には平均に落ち着いたという感じですかね。
個人的には「テーマソング」が4分未満なのは少し意外でした。確実に4分以上、なんなら5分弱はあると思っていたので。それくらい中身の濃い楽曲ということですかね。
テンポ
楽曲のテンポ(bpm=beats per minute)の平均を確認します。
ここでは1つ注意点がありまして、Spotifyに記録されているテンポ情報は信憑性に欠けるものが一定数含まれています。
例えば本当はbpmが「180」の曲が、Spotifyでは「90」と記録されている場合があります。
またその逆で本当は「90」なのに「180」と記録されているものもあります。
これは「180」の楽曲を四分音符2つ分を四分音符1つ分(一拍)と認識してしまった際に「90」となり、逆に「90」の楽曲でうっかり八分音符1つ分をうっかり四分音符1つ分(一拍)と認識してしまっているということだと思います。
おそらくAI的なもので自動的に識別しているためにこのようなエラーが起こるのだと思います。
これに関しては修正をしたかったのですが、やり始めるとキリがないため今のところ明らかに違うと判断できた数曲を除いてはローデータのままの値になっています。
やや違和感のある楽曲があるかもしれませんがご了承ください。
それではみてみましょう。
『暁』の平均テンポは119となりました。過去11作の平均も119なので平均と同水準です。
ただ、ただ歴代アルバムの中では8番目の速さということになるので、ポルノのアルバムにしては少しテンポが遅めの曲が多いという印象ですね。
確かに「フラワー」、「ブレス」、「ナンバー」などbpmが100未満のゆっくりした曲が多いですからね。
一番速いのは「暁」の188でした。
ちなみに過去のアルバムで最も平均テンポが小さいのは「WORLDILLIA」でした。
これに関してはかなり納得です。「赤いオレンジ」とか「デッサン♯3」とか「素晴らしき人生かな?」とか、ゆっくりめな曲が多いですからね。
Energy(活発さ・激しさ)
ここからはSpotifyが独自につけている数値をみていきましょう。
Energyは0.0-1.0の値をとり、1.0に近いほど活発さ・激しさの度合いが大きいことを意味します。
『暁』の平均は0.79でした。結構活発よりではありますが、過去のアルバムと比べると低い方ですね。
もっとも値が大きかったのは「Zombies are standing out」でした。
続いて「VS」「悪霊少女」「テーマソング」が0.9を超える高水準に達しています。
『ロマンチスト・エゴイスト』が1番高いことに少しびっくりしています。
やはり1stアルバムならではの勢いみたいなものがあるんですかね。若かったし。
これはまた個別にみていくことにしましょう。
逆に1番低いのが『m-CABI』というのも少し意外です。
Valence(ポジティブさ)
こちらも0.0 - 1.0の値をとり、1.0に近づくほどポジティブということらしいです。
『暁』の平均は0.50で下から2番目となりました。
楽曲別に見ると最も高いのは「バトロワ・ゲームズ」でした。少し意外です。
「ジルダ」「ブレス」「テーマソング」が0.7くらいで高めなのはなんとなく納得できます。
一方で一番低いのは「暁」と「Zombies are standing out」でした。
これが何を基準に算出されているのかはよくわからないのですが、確かに「Zombie ~」に希望はないなとは思います。
アルバム別で見ると『雲をも掴む民』、『WORLDILLIA』がどちらかというポジティブ度が高いのが意外でした。
- 「ラスト・オブ・ヒーロー」 : 0.84
- 「素晴らしき人生かな?」 : 0.86
でしたけど、この曲たちはそんなにポジティブだったんですね(笑
おそらくこの値ってSpotifyのプレイリスト(「気分が明るくなるプレリスト」的なやつ)の作成にも使われてるのではないかと思いますけど、明るい曲プレイリストの中に「ラスト・オブ・ヒーロー」入ってたらズッコケますよね。
Danceability(踊りやすさ)
こちらも0.0 - 1.0の値をとり、1.0に近づくほどダンサブルということらしいです。
『暁』の平均は0.53です。過去11作の平均が0.55なので少し低いですね。
しかし、そもそもポルノグラフィティのアルバムのDanceabilityは0.5から0.6の間に収まっているので、そんなにダンサブルな楽曲はないようです。
暁の中で最も高いのは意外にも「ブレス」で0.69でした。
過去のアルバムの中でこの数値が高いのは
- 「ロックバンドがやってきた」(ポルノグラフィティ): 0.87
- 「Aokage」(雲を掴む民) : 0.80
- 「Hey Mama」(RHINOCEROS) : 0.82
でした。意外ですね。
テンポやビートの強さで決まる値らしいですが、「Aokage」ってダンサブルですか?
Acousticness(アコースティック感)
こちらも0.0 - 1.0の値をとり、1.0に近づくほどアコースティックな楽曲ということらしいです。
これは曲の明るいくらいとはあまり関係ないですが、興味本位で見ていきます。
『暁』の平均は0.06です。過去11作の平均が0.1なのでこちらも少し低いですね。
一番アコースティックな曲は「You are my Queen」の0.65 ということで異様に高いですが、これは結構納得できるかもしれません。
おそらくアコギとかの生音が多めになっているとアコースティック寄りと判定されるのでしょうね。
その他のアルバムでアコースティック度が高いのは
- 「夜はお静かに」(雲を掴む民) : 0.94
- 「m-NAVI2 "Keep on having fun with the MUSIC CABINET"」: 0.71
- 「グラヴィティ」(m-CABI) : 0.69
- 「ワン・ウーマン・ショー 〜甘い幻〜」 : 0.68
という感じでした。アコースティック界の絶対王者「夜はお静かに」ですね。
「くちびるにうた」とかもいい線行くんじゃないかと思ってたんですが、意外と0.18でした。
あと私の大好きな「クリシェ」は 0.52 でそこそこアコースティックでしたね。
このアコースティック度は生音が鳴っているかだけではなく、全体の音数(楽器の数)も影響してそうな数値だなと思いました。
まとめ
ということで、Spotifyが公開しているデータを使ってアルバム『暁』の立ち位置をみてきました。
ということで、検証結果としては
確かにトーンの暗い曲が多い!!!
ということになりました。
メンバーの言っていた通りでしたね。
私自身、このアルバムを聴いた時、明るいなとか、華やかだなという印象はありませんでした。
でもそれはあくまで印象なので、他の作品と比べてどうこうというのは明確に言えるものではありません。
今回、Spotifyのデータを、あくまで一つの参考指標として利用し、アルバム同士の比較をしてみました。
数値で比較することで、その印象が間違ってないことが定量的に確かめられたのは非常に面白かったです。
自分のイメージ通りな部分もあれば、そうでない部分もありましたけれども。
今回はアルバムのみの比較でしたが、今後はもう少しデータを整備して、シングル曲も含め様々な観点からポルノの楽曲を分析してみたいなと思います。
お楽しみに!
今回も読んでいただきありがとうございました!
<作品情報>
12th アルバム『暁』