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10th single「渦」【ポルノ全作レビュー #2】


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10th single「渦」【ポルノ全作レビュー#2】

はじめに

こんにちはリンクです。
2月になりましたね。
1月はあっという間というほどではないですが、そこそこに早く過ぎていった気がします。

この企画を始めてから気づいたのですが、2月リリースのポルノの作品は結構ディープなものが揃ってます。
今日紹介する作品も初っ端からかなり深く、重いです。

それでは、早速行ってみましょう。

「渦」作品情報

Title:
Release date: 2003/2/5
Price: ¥1,282(tax in)

Tracks:
1.
 作詞:新藤晴一 作曲:Tama 編曲:ak.homma, ポルノグラフィティ
2. ワールド☆サタデーグラフティ
 作詞:新藤晴一 作曲:ak.homma 編曲:ak.homma, ポルノグラフィティ
3. 蝙蝠
 作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一 編曲:ak.homma, ポルノグラフィティ

オリコン週間ランキング初登場: 3位(最高位)

作品概要

2003年はシングルを5枚もリリースするという、ポルノグラフィティにしてはかなり張り切った1年でした。
釈由美子さん主演のテレビ朝日系ドラマ「スカイハイ」の主題歌になっています。
また、このシングルから懐かしのレーベルゲートCD(CCCD)仕様になっていますね。
シングルとしては前作「Mugen」から9ヶ月振りのリリースであり、4thアルバム「WORLDILLIA」のリードシングルにもなっています。

全曲レビュー

「渦」


www.youtube.com

曲・アレンジについて

この曲がリリースされたのは2003年2月ということで、私はまだ中1でした。
それまでのポルノは本間さんが作った曲がシングルになることが多く、ポップでロックでキャッチーな曲が多い印象でした。
しかしこの「渦」を聴いた時、わずかながらに戸惑ったのを覚えています。

「こ、こういう曲もやるんだな……」と。

それまでのキャッチーさ、明るさのある楽曲とは打って変わって、重く暗い感じの楽曲。
アルバム曲やカップリング曲も聴く中で、ポルノにはこういう一面があることは感じてはいましたが、まさかこれをシングルにするとは思っていませんでした。
最初はなかなか受け入れられなかったというか、ポルノの曲だからCDも買いましたけど、好きになるまでに時間がかかった曲だなと思います。

今振り返ると、Tamaが作るこういう重たい感じの、粘っこい感じの曲も初期のポルノの魅力でしたね。
「アポロ」とか「ミュージック・アワー」みたいなポップな曲だけじゃなく、こういうちょっとヤバめの曲もさらっとやってしまうところが一つのポルノらしさだと思います。
Tamaが作った曲ということもありますし、まだまだデビュー4年目でメンバー全員が若かったということも含めて、3人時代ならではヤバさというか、今時の言葉で言うなら「エモさ」的なものがある楽曲じゃないでしょうか。

なお、この曲はシングル曲では初めて3拍子が取り入れられているのですが、Wikipediaによると「間奏は"3/4拍子→2/4拍子→3/4拍子→4/4拍子→3/4拍子→2/4拍子→3/4拍子"と変拍子となっている」らしく、これが私にはさっぱりわかりません。

アレンジはさすが本間さんだなと思います。 ブラスとエレキギターとアコギの混ざり合ったイントロは一気に曲の世界に引きずり込まれますし、Aメロからずっと鳴ってるアコギがいい。
ただしこのアコギは「WORLDILLIA」に収録されている「渦(Helix Track)」の方がよく聞こえる気がする。
ポルノの曲ってエレキとアコギの組み合わせがすごくかっこいい曲が多いなと思いますね。

この曲はドラムも特徴的で、左右と真ん中の3箇所から聞こえてきます。3台分のドラムが入ってるんですね。
僕の人生でドラムを叩くことはない気がしますが、いつかドラムにチャレンジすることがあれば「渦」を叩いてみたい。命をかけて。

歌詞について

歌詞について、実はあまり深く考えたことがなかったのですが、好きな人に捨てられそうになっている人の歌ですよね?きっと。
浮気だか不倫だかしていて、「あなた」の一番にはなれないことを悟ったけども、「あなた」を諦めることができないということでしょう。

凍えたよ 空の下 裸のまま追い出して

が物理的にか、心理的になのか、中学1年生の僕にはわかりませんでしたし、物理的に裸のまま追い出されたら凍え死ぬだろうなと思っていましたが、なんとなく「あなた」との間に距離や壁を感じていることだけは理解できました。

こういうとこが晴一のすごいところだと思うんですけど、かなり抽象的な心理描写なのに、ちゃんとわかりやすい表現を使ってるんですよね。
この曲を初めて聴いた中1の僕には当然ながら主人公の気持ちなどわかるわけもないのですが(そんな経験もないので)、この1行目で主人公がどういう状況なのかはなんとなくわかるんですよね。
抽象的なことを歌っていても、最初の数行で前提条件をしっかり説明できてしまうのはさすがだなと思います。
Aメロでしっかり物語に引き込んで最後まで聞かせてしまう、J-POPの歌詞のお手本のような構成じゃないでしょうか。

ここで言う渦というのは、諦めきれず「あなた」に引き込まれていく自分の気持ち、欲望みたいなものを表しているんでしょうかね。

揺れて乱れ叫ぶ僕がいる

が物理的にか心理的にかもわかりませんが、物理的にならかなり主人公はやばいなと思っていました。

こういうやばい曲を若い頃の昭仁に歌わせたら狂気に満ちてていいですね。
今歌ってもいいんだけど、若い頃の多少勢いに任せた感じの歌い方もいいです。

この曲がぴったり!というシチュエーションは人生でなかなか訪れませんが、それでもふとした時に、たまに聴きたくなる曲です。
またライブでも聴きたいなと思いますね。

「ワールド☆サタデーグラフティ」

--

土曜日なのに雨だね ここは東京なのにひとりだね

このフレーズを初めて聴いた頃は地元、九州の田舎に住んでいたのですが、今は東京で1人で聴いているので少し感慨深いです。
結構好きなフレーズですね。

「ワールド☆サタデーグラフティ」はNHKの懐かしい音楽番組「ポップジャム」のエンディングテーマでしたね。 今の十代くらいの人はきっと知らない番組でしょうけども。
ポルノはもちろんそのポップジャムに出てこの曲を披露しています。カップリングをテレビで歌うのはかなり珍しいですね。

このシングルで唯一アップテンポな明るい曲です。こいつのおかげでシングル全体のバランスがなんとか取れていると言っても過言ではないでしょう。

作曲は本間さんということで、軽快でキャッチーなメロディはさすがです。
この曲から「世界の土曜日事情」をテーマに詞を書こうと思った晴一もなかなかすごいと思います。
単純な恋愛の歌とかに持っていくんじゃなくて、こういう独特なテーマを用意して、そして最後に「明日はきっといい日さ」って言って背中を押す晴一のツンデレさと言ったらもう。

無口なサボテンとじゃどうも途切れ気味になる会話

という一節も非常に晴一らしい。晴一は擬人化のセンスに長けていますよね。

シングルを買った当時はきっとこの曲が一番好きだったと思います。わかりやすくポルノだったので。

「蝙蝠」

最終的に、このシングルの中で一番好きなのはこの曲です。

「蝙蝠」

作詞・作曲:新藤晴一

ということで、晴一の才能が凝縮された1曲じゃないかと思います。
晴一の曲だけでベストアルバム作るとしたら、「空想化学少年」と並んで真っ先に入れるべきだと思います。

この曲はもう何がどうこうとかではなく全てがいいです。

これもやはり中1の私には歌詞の意味がよくわからなかったんですが、すごく晴一らしい良い歌詞だということだけはわかりました。

綺麗な色も何度か
重ねていけばいつか
哀しい黒色になる
諦めたように

どうしたらこんな詞が書けるんでしょう。

綺麗な色を何度か重ねれば黒くなることは僕も知ってるんですよ。
でも「諦めたように哀しい黒色になったなぁ」と思ったことは一度もないわけで。
誰もが知っていることをこういう風に切り取ることができるのは、それだけ日頃から物事を多面的に見ているということなんでしょうね。

僕らは今更 白い鳥じゃない 身を寄せ合う蝙蝠でいい

この最後のサビのフレーズからはそれこそ諦めも感じられますが、メロディに乗せて聴いてみると、どことなく潔さも感じられるんですよね。
黒く濁って孤独になったことさえも受け入れようとする気持ちが感じられるというか。
主人公が置かれている状況はきっと決してハッピーではないのですが、それを受け入れようとすること自体に前向きさを感じます。

「蝙蝠」は本当はこの1曲だけで記事を書くべき曲だなぁと思いますね。

なかなかライブで披露されることのない曲ですが、またどこかで聞けたら嬉しいです。

おわりに

こうやって振り返ってみると、「渦」というシングルは新藤晴一の作詞家としての才能がまざまざと感じられる1枚でした。 やはり僕が一番尊敬する作詞家は新藤晴一だなと思います。

「渦」がリリースされた頃、ポルノはメジャーデビューから3年半が経っていましたが、僕のファン歴も同じく3年半程度でした。
今から見れば「3人時代」とか「初期」と言われる時期でしょう。
3人時代の曲は本当に何十回、何百回と聞き込んだ記憶がありますし、この頃の曲を聴いて自分の中の「ポルノグラフィティ」像が出来上がっていったんだと思います。
うまく言語化できないですが、ファンなら誰もがそれぞれに持ってる「ポルノらしら」みたいな概念が正に培われていた時期ですね。
「渦」で自分の中の「ポルノらしさ」が少し更新されたのを覚えています。

これからポルノが「渦」みたいな曲ばっか出したらどうしよう、とも思っていましたね(笑
やっぱアップテンポでキャッチーなポルノを求めていたので。
まぁ、その不安は次回作でも継続されることになるのですが、それはまた夏ごろに話すことにしましょう。

ということで、全作レビュー第2弾でした。

次の2月リリースの作品はアレですね!
もう10年も経っていることに驚きが隠せません!

次回もお楽しみに!


10thシングル「渦」に収録されている楽曲が奇跡的に全曲披露されたライブはこちら!