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5th single「サボテン」はもう1つのデビューシングルと言っても過言ではない【ポルノグラフィティ全作レビュー#56】


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はじめに

こんばんバス!

とても寒くなってきましたね。
冬の歌という訳ではないと思いますが、この時期になると聞きたくなるのが今日紹介するシングルです。

「サボテン」作品情報

Title: サボテン
Release date: 00/12/06

Tracks:
1. サボテン
 作詞:ハルイチ 作曲:シラタマ  
2. ダイアリー 00/08/28
 作詞:ハルイチ 作曲:シラタマ  
3. いつか会えたら
 作詞:ハルイチ 作曲:ハルイチ
4. サボテン Sonority
 作詞:ハルイチ 作曲:シラタマ

   全編曲:ak.homma, ポルノグラフィティ

オリコン週間ランキング初登場: 1位(最高位)
累計売上枚数:47.5万枚

作品概要

前作「サウダージ」が大ヒットしている真っ最中にリリースされた。
メンバー作曲の楽曲が初めてシングル曲となった作品。
オリコン週間シングルランキングで初登場1位を初めて獲得した。

全曲レビュー

「サボテン」

www.youtube.com

インディーズ時代から温めていた楽曲。シングルになるまでにいくつかのバージョンが作られており、その度にタイトルも変わっています。

当時のポルノグラフィティはデビューシングル「アポロ」からヒット曲を連発して波に乗っていました。
激戦区の日程にリリースされた「ヒトリノ夜」こそTOP10入りしませんでしたが、それでも枚数的には十分なヒット。
ミュージック・アワー」は言わずと知れた夏の定番曲になりましたし、「サウダージ」だってこの令和の時代にまた流行りかけているほどの名曲です。
そんな最強なシングル曲を連発していたポルノは無敵でした。初の紅白歌合戦出場も決まっていました。
以前カフェイン11で、晴一が、「わしらも昔はYOASOBIくらい人気だった」と子供に話したと言うエピソードを披露していましたが、マジでその通りなんですよ。
なんであの当時ドームライブとかやらなかったのかわからないくらい。絶対5万人くらいなら集まりましたよ。

そんな勢いに乗っていたポルノグラフィティが、2000年後半のシングルリリースラッシュの締めくくりとして発表したのがこの「サボテン」。

5枚目のシングルにして初めてのメンバー作曲の作品。シングルに収録されている全曲がメンバー作です。
本間さんはアレンジにしか名前がありません。

リリース当時、私はまだ小5だったので、あまり深く考えていませんでした。
「へぇ、今回はak.hommaって人曲書いてないんだぁ」くらいの印象しかなかったと思います。

でも今考えると、このシングルを出すことにはとても大きな意味があったのでしょうね。
やはりメンバー自身も自分達の曲でやっていきたいという気持ちがデビュー前からあった訳で。
デビュー曲は本間さんの作った「アポロ」になり、その後も本間さんの曲でヒットを連発していて順風満帆ではありましたが、自分達の曲で勝負したいという気持ちはずっとあったはずです。
そしてこの5枚目でようやく、自分達の曲だけで構成されたシングルをリリースできた。
この作品はある意味で、もう一つのデビューシングルと言っても過言ではないと思います。

ポルノグラフィティというのはこういうバンドなんだ!というのを初めて世間にアピールできた一枚かもしれません。

そういう記念すべきシングル、記念すべき楽曲です。

歌詞について

雨が降りそうな日にさえ、サボテンに溢れるくらい水をあげてる恋人との別れの曲ですよね。

冒頭から

呼びあうように出逢ったのに

と言っているので、きっと運命的な出逢いだとお互い感じていたのでしょう。

でもいつの間にか関係が冷めきってしまったのでしょうか。

恋人とという響きに すべて委ねて
顧ることもなくて
君が側にいてくれることも
惜しみない愛にも慣れていたんだね

マンネリ的な、倦怠期的なやつでしょうか。
最初はちょっとしたことでも喜んでいたし、少しの優しさに感謝もしていたのだけど、時間が経つにつれてそれが当たり前になってしまうというのは誰でもあることだと思います。

どちらがどう悪かったかというのはこの歌詞の中には書かれていないので、きっとお互いに悪い部分はあったのでしょうね。

君が見せたささやかなサイン
見落としてしまっていたよ

とありますから、彼女もそれなりに気持ちを伝えようとはしていたはず。
今のままじゃ良くないなぁと思っていたのでしょうけど、彼にはそれがわからなかったんですね。

「カメレオン・レンズ」じゃないですけど、側にいてもお互い見ているものは違っていたのかもしれません。

彼女はサボテンに溢れるほどの水をやっていた訳ですが、彼からみれば彼女はそれくらいに的外れなことをしていたのかもしれませんね。
そうじゃないのになぁ、それはしてほしいことと違うのになぁ、みたいな気持ちをお互い募らせていったのかもしれません。

なんとなく、そういうすれ違いの曲なんじゃないかと個人的には解釈しています。

会いたいからって 口実に誘った映画を
はしゃいでいた日々を
どうして忘れていたんだろう
馴れあいの関係にうんざりするはずさ

ここ好きなんですけど、切ないですね。
きっと多くの人が経験したことのある感情じゃないでしょうか。

ほら、薄日が射してきた
小さな花を咲かそう

最後はほんの僅かな希望を残して終わるのですが、その結末は……。

ライブバージョンもどうぞ。

www.youtube.com

「ダイアリー 00/08/28」

いつか大事な日にやろうと言って作った曲だそうです。

まさにタイトルにあるダイアリーのように、2000年8月26日に思ったことを歌詞にした曲。

メジャーデビューしてから約1年、夢を叶えた自分と、夢を追っていたあの頃の自分を行き来するような歌詞になっており、一言一言にとてもリアリティがあるというか、普段フィクションしか書かない晴一だけど、ここには本当にその時思ったことを書いたんだろうなというのが読み取れます。

あいかわらずGuitarを離さずにいるんだよ
それは夢を描くペンでもあったんだし、前からそうだし。

という表現がとても晴一だなぁと。
「夢を描くペン」という表現がとても好きで、文学を愛し、まるで小説のような緻密なフィクションを歌詞の中で構築してしまう新藤晴一という作詞家にぴったりのフレーズだなと思っています。

夜ごと、君に話してた未来についての言葉は、

晴一はこの後も何度か「夜ごと君に」話をしますが、これが初めての「夜ごと君に話した」瞬間です。
思えば「夜ごと」って表現、あまり普段使わないですよね。

壊すべきこの世の中と、それとなくうまくやれてる。

インディーズの頃に思い描いていたようなバンドではなく、思った以上にポップでキャッチーな曲を歌う親しみやすいバンドになっている自分達に対する皮肉かもしれません。

気まぐれなヒットチャートよ、ご機嫌いかがですか?

このフレーズは新藤晴一にしか書けないですね。

汚れた手でGuitarを触ってはいないかな?

これは純粋に音楽を楽しんでいたあの頃の気持ちを忘れかけてないかい?大事にしてたものを忘れて欲にまみれていないかい?的な意味ですかね。

この曲だとか、「TVスター」とかを聞くと、晴一はメジャーデビューをしてから追いかけてた理想と現実の間でいろいろなことを思ったんだろうなと、いろいろなことを飲み込んできたんだろうなというのを感じるんですよ。

きっと自分達のやりたいようにやれない現実があったでしょうし、大切に作った歌も切り取られるし、そもそもテレビじゃ生演奏もさせてもらえないし、一気に有名になって売れてしまった分、たくさんの初めてに出会い、たくさんの疑問を感じ、自分の気持ちや初期衝動的なものも見失いそうになりつつ、現実に食らいついて必死で活動をしていたんだと思います。

そういう、その当時しか感じられないことを、丁寧に切り取って歌詞にしている。その時の、その瞬間の心のうちをストレートに綴っているという点で、この曲はとてもロックだなと思います。

「いつか会えたら」

初めてCDに収録された晴一曲です。

最初の印象は「昭仁の裏声!!!」でした。

いろいろと謎な曲ですよね。

昭仁はファルセットが苦手だったのになんでこんなサビでファルセットが炸裂する曲にチャレンジしたのだろうと思います。
苦手ながらこそやってみようという昭仁のストイックさが出たんですかね。
それまでのシングルではここまでのファルセットは披露されていなかったので、かなりのインパクトがありました。

また、歌詞にしても、「あなたはいない」んですよね。
でも良く晴れた日曜日に車で海に行ったり、星の見える夜に車で街に出たりしようとしてるんですよね。

あなたはなぜいないんでしょう。

夏が過ぎ秋を越え 真っ白な冬がくる

と言っているので、あなたがいなくなたのは春なのでしょうか。

いなくなった理由によっては、かなり切ない曲ですね。

春、ですか。  

「サボテン Sonority」

「サボテン」のバージョン違いですが、全て過去形になっており、結局二人の関係がうまくいかなかったことがわかります。

別れてしまったから悲しいはずなのですが、もしかしたらもうどこか吹っ切れたところがあるのか、「サボテン」よりも明るく、やや前向きな雰囲気がします。

両方聞き込んでしまうと、たまにどっちの歌詞だったかわからなく現象に襲われます。

君の影と白いノイズ

はSonorityの方ですからね!

おわりに

「サボテン」は3人時代の名曲だと言われることが多いです。好きなファンの方も多いでしょう。
YouTubeのコメントなんかを見ていても、「サボテンが一番好きです!」みたいな人がたまにいます。
え、まじで?と思いますし、一番好きな曲がサボテンでよくここまでファン続けてこれたなとおも思いますが、そういう方もいます。

私自身は特に好きな曲という訳ではないですが、ポルノがデビューしてイケイケだったあの頃、2000年の終わり頃の思い出が詰まった曲です。

ギターを練習し始めて、最初に弾いたのも「サボテン」でした。ギターを始めたポルノファンあるあるだと思います。簡単なので。

全作レビューをここまで続けてきましたが、3人時代の作品を紹介するのは今回が最後です!
もともと17作品しかないので、全体の3分の1もないんですよね。
それだけ二人時代が長くなってしまったということでもあります。

3人時代というのは僕がポルノを好きになった時のポルノなわけで、僕にとっては原点です。
昭仁と晴一とTamaがいたからポルノを好きになった訳ですからね。

あの頃の気持ちを忘れずにいたいなぁと、改めて思いました。



「ダイアリー 00/08/28」が披露されましたね。