統計検定2級を受験までの道のりを記すことにします。
1. はじめに
こんにちは、私です。
先日、統計検定2級をCBTで受験し、めでたく合格しましたので、私の勉強方法や利用した教材を紹介していきたいと思います。
1.1. 統計検定2級の概要(公式サイトより引用)
大学基礎課程(1・2年次学部共通)で習得すべきことについて検定を行います。
(1) 現状についての問題の発見、その解決のためのデータの収集
(2) 仮説の構築と検証を行える統計力
(3) 新知見獲得の契機を見出すという統計的問題解決力
について試験します。
【具体的な内容】
統計検定2級では、統計検定3・4級の内容に加え、以下の内容を含みます。
- 1変数データ(中心傾向の指標、散らばりの指標、中心と散らばりの活用、時系列データの処理)
- 2変数以上のデータ(散布図と相関、カテゴリカルデータの解析、単回帰と予測)
- 推測のためのデータ収集法(観察研究と実験研究、各種の標本調査法、フィッシャーの3原則)
- 確率(統計的推測の基礎となる確率、ベイズの定理)
- 確率分布(各種の確率分布とその平均・分散)
- 標本分布(標本平均・標本比率の分布、二項分布の正規近似、t分布・カイ二乗分布、F分布)
- 推定(推定量の一致性・不偏性、区間推定、母平均・母比率・母分散の区間推定)
- 仮説検定(p値、2種類の過誤、母平均・母比率・母分散の検定[1標本、2標本])
- カイ二乗検定(適合度検定、独立性の検定)
- 線形モデル(回帰分析、実験計画)
出題範囲の詳細については「出題範囲表」を参照してください。
試験形式 | 4~5肢選択問題(マークシート) |
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問題数 | 35問程度 |
試験時間 | 90分 |
合格水準 | 100点満点で70 点以上、難易度を考慮して調整されることがあります |
※ CBT受験の場合の合格水準は60点以上となります。
その他、統計検定についての詳細は公式サイトをご覧ください。
2. 前提知識
具体的な勉強方法や教材を紹介する前に、勉強開始前の私の知識について説明しておきます。
どの程度の前提知識があるかによって勉強時間や使うべき教材も変わってくると思うので、何気にここが一番重要だと思います。
2.1. 統計学の学習歴
私は理系で、情報工学部の出身であるため、数理統計という講義で教養レベルの統計は学びました。講義の範囲はまさに、ジャスト統計検定2級レベルです。
が、それもいまは昔のことで、あの頃学んだ内容はほぼほぼ失ってしまったような状態でした。用語や定義などはうっすら覚えていて、勉強する上で抵抗はないのですが、問題を解こうとするとペンが鉛のように重くなり手が止まってしまう現象が多発して悩んでいました。何かの呪いだったんだと思います。
2.2. 統計検定の受験歴
昨年の5月にCBTで3級を受験し、合格しました。それ以来統計の勉強はほとんどしてなかったので、2級の勉強を始める前の私の知識はジャスト3級レベルでした。
2級の受験は今回が初めてです。
というわけで、私のレベルは、大学で統計を勉強したことはあるものの、今は3級レベルの知識しか持ってない、模範的な2級挑戦者というところでした。
ここからは、そんな私がどのように勉強したかを紹介していきます。
3. 目標を立てる
まず最初にしたことは、目標点の設定です。
統計検定のCBTでは明確な合格水準が設けられており、60点以上で合格となります。
問題数は35問程度なので、単純計算で21問正解すれば合格です。つまり10問以上間違えていいわけです。
(配点が非公表なのであくまでざっくりとした見積もりですが。)
なので、それをいいことに、最初から7割程度得点できれば良いくらいの気持ちで勉強しました。あわよくば8割という感じです。
本当はこの機会に統計をマスターしてやるぜ!くらいの意気込みで勉強した方がいいのかもしれませんが、時間的に余裕もありませんでしたし、私自身、統計にそこまでモチベーションを持つことができなかったのでそのような目標になりました。
4. 勉強時間
4.1. 勉強期間
受験日が2020年9月12日だったので、およそ1ヶ月前の8月10日頃から勉強を始めました。
なので勉強期間はジャスト1ヶ月です。
4.2. 1日あたりの勉強時間
1日あたり平均して1時間〜2時間程度は勉強しました。
日によって取れる時間や、私の集中力がまちまちだったのでムラがありますが、最低でも1時間はするようにしました。
昼休みや帰宅後、寝るまでの時間を活用して勉強しました。
「全く勉強しない = 勉強時間0分の日」を作らないように心がけていた気がします。
そもそも好きではない統計の勉強をしているので、何かをきっかけに途絶えてしまったらもう二度と戻ってこれない気がしたので。
合計の勉強時間は40〜50時間と言ったところでしょう。
5. 使用教材
5.1. 統計学入門 (基礎統計学Ⅰ) (東京大学出版会)
その名の通り、統計学入門の定番ですね。内容は統計検定の3級・2級の出題範囲+αという感じだと思います。
コレログラムや分散分析などをのぞいて、2級の出題範囲はこのテキストでほぼまかなえました。
まずこのテキストを最初に軽く読んでから、次に紹介する問題集へと進んで行きました。
5.2. 確率統計問題集 (高専テキストシリーズ) (森北出版)
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高専の生徒向けの問題集です。解答解説・付表まで含めて全101ページで、問題集としては薄い部類に入るのですが、内容は十分でした。章のはじめに定義や公式がまとめられており、その後に練習問題が続くという形式は高校数学の教科書傍用問題集のそれと全く同じ感じで、非常にスムーズに解くことができました。
難易度も基礎〜標準で、初学者が練習するにはちょうどいいように思います。
解説は割と簡素ですが、そこまで理解に苦しむことはなく。どうしてもわからない場合は、「統計学入門」で定義などを確認しました。
この問題集は個人的にすごく気に入っています。高専向けというのがポイントかもしれません。大学向けの問題集よりは愛想があり、高校向けの問題集よりは愛想がない、絶妙なテイストが私の好みでした。
統計検定2級の勉強をされる方にはおすすめの問題集です。
ただ、注意点としては、普通の問題集なので、統計検定のマーク式の問題には出ないようなタイプの問題も載っていたりします。
統計を学ぶという意味ではそういった問題も無駄ではないですが、時間がなく、統計検定に出そうな問題だけやりたい!という方は、適宜自分で判断して、必要な問題だけを解いた方がいいです。
今回、私は時間がなかったのでそのようにして解き進めました。
1冊終わるまでの期間は10日程度だったかと思います。
5.3. 日本統計学会公式認定 統計検定 2級 公式問題集[2017〜2019年]
定番の教材ですね。公式の過去問です。過去3年・6回分の問題が掲載されています。
勉強に着手した最初のころ、いきなり過去問を解いてみたのですが、自力では全くとけず、2回分くらい解いて挫折しました。基本的な分布や、信頼区間、検定の意味などをよく理解していなかったので当たり前といえば当たり前です。
そこで、上で紹介した「統計学入門」と「確率統計問題集」で基礎固めをしてから、再び過去問に着手しました。
私は偶然にも手元に2015〜2017年の問題集があったので、過去5年・10回分の過去問を解きました。
公式問題集の解説はわかりやすくもなく、わかりにくくもない、THE 普通です。
公式の教材は、問題集にしても教科書にしても、学習者に寄り添う気持ちが基本的に感じられないので、そこはもう諦めるしかないのですが、それでは理解が進まないので、解説を読んでわからない場合は、適宜ググるなどして他の方の解説を読んだ方がいいです。
5.4. 統計検定2級合格のツボ (Kindle)
こちらも結構有名なのではないでしょうか。Kindle本のみで、物理本は出ていません。
ちょうどKindle unlimitedをお試しで使っていたこともあり、この本をダウンロードしました。教科書として、何気に「統計学入門」よりもこちらの方をよく読んだ気がします。
統計検定の出題範囲を、統計検定の過去問を用いて解説していくというなんとも画期的で効率的な構成です。
ただ、過去問自体は掲載されていないので、別に過去問を用意しておく必要はあります。ほとんどの人が過去問は用意すると思うので、あまり気にすることではありませんが。
過去問を解いていてわからない問題があると、この本で該当箇所を読む、そしてもう一度解くというのを繰り返しました。
この本の良いところは、統計検定2級特有の分野である一元配置分散分析やコレログラムなど、普通の統計の教科書・問題集に載っていない内容をしっかりカバーしているところです。特にコレログラムはググってもよくわからなかったので、この本が非常に役に立ちました。
Kindle unlimitedに加入していない方でも、660円という破格の安さなので手にとりやすかと思います。おすすめです。
5.5. 統計学の時間(統計WEB)
こちらも定番のサイトです。統計WEBの統計学の時間。
統計検定2級の範囲を非常に簡潔に、網羅的にまとめてありますので、マジのガチの初学者の方はここを全部読むことから始めるのが良いと思います。
説明だけでなく練習問題もついているのがありがたいですね。私はほとんど解いていませんが。
「統計学入門」や「統計検定2級合格のツボ」と合わせて、わからないところや忘れてることを思い出したいときにググってはこのページに行き着いてました。
全て無料で閲覧可能なので、ひとまず統計学がどんな分野なのか知りたいという方にもおすすめですね。
6. 勉強方法
使用教材の中でほとんど話してしまいましたが、私の勉強方法を時系列で簡単にまとめたいと思います。
6.1. 過去問に挫折(初期:勉強開始から5日目くらいまで)
最初に過去問に手を付けたのですが、当然の如く全然解けませんでした。半分正解するかどうかのレベルです。知識が抜け落ちている、もしくはそもそも身についていないことを実感しました。
初学者の方はいきなり過去問を解くなどということは本当に時間の無駄なのでやめた方がいいと思います。(うっすら眺めるだけで十分です。)
しかし、過去に少しでも勉強したことがあって、自分の今のレベルがわからないという方は、最初に1、2回分解いて、自分のレベルを把握するといいでしょう。
そういう意味でこのフェーズは無駄ではありませんでした。
6.2. 教材を揃える
大学時代の知識がほとんど抜け落ちていることが判明したので、改めて教科書と問題集を揃えることにしました。
大学時代の教科書や、いつ買ったかわからないマセマのテキストはあったのですが、いまいち好きになれなかったので、思い切って新しい教材を買うことにしました。
いろいろ悩んで買ったのが上で紹介した3冊(統計学入門・確率統計問題集・統計検定2級合格のツボ)です。
「統計学入門」はあまりにも有名すぎる教科書ですので、統計を真面目に勉強するならやはり持っておいた方がいいのでは?と思い、購入しました。結果的に買ってよかったなと思います。ネット上にはこの教科書の問題をいろいろと指摘されている方もいますが、少なくとも私のようなにわかの学習者には影響のない範囲だと思いますので、興味がある方は買ってみると良いと思います。
「確率統計問題集」もどこかでレビューを見て、良さげだったので買いました。教材紹介でも述べましたが、この問題集は本当におすすめです。こういう基礎〜標準レベルをコンパクトにまとめた問題集が個人的には大好きで。この薄さもちょうどいいんですよね。割と短時間で1冊解き終えました。
「統計検定2級合格のツボ」は職場の先輩に教えてもらって知りました。これも結構役に立ちましたね。過去問を解いて意味不明な問題に出くわした時、この本を見るとまさにその問題が解説されていたときは感動を覚えました(笑
1つの検定のために3冊も揃えたというと、多すぎるのでは?と思う方もいるかもしれません。
確かに私も、普通に統計学を勉強するだけなら「統計学入門」と「確率統計問題集」の2冊で十分だと思います。しかし、統計検定という試験に特化した勉強を、短時間で効率的に行うには「統計検定2級合格のツボ」のような教材が必要だったと思います。
どんな検定にも出題傾向や問題のクセがあります。時間に余裕があれば何回も過去問を解いて、自分で傾向を見抜けばいいのでしょうが、それができる人ばかりではないので、あくまでも短時間で効率的に勉強したいという方には、こういう教材が必要なのではないかと思います。
ということで、個人的に最低限必要な教材を準備したというわけです。
6.3. ひたすら勉強する(中期:2週目〜3週目)
教材を揃えた後はひたすら勉強です。
ひとまず「統計学入門」を軽く流し読みしてから、次の(1)〜(3)を繰り返しました。
(1) 教科書を読む
(2) 問題集を解く
(3) わからないところを教科書やネットで調べる
問題集が割と解きやすいレベルなので、進めば進むほどにどんどん解けるようになり、自尊感情がとても高まりました。
勉強をしている時って、簡単な問題でもいいから、自力で解けるということが大事ですよね。そうして自信をつけることで、少し難しい問題にも取り組めるようになると思います。
わからない問題に出会ったときは、まず解答を読みましょう。解答を読んでわからない場合は、教科書を読んだりググったり、いろいろな解説を読んで自分が一番納得いく説明を見つけてください。人によって説明の仕方は違うので、自分に合う説明を見つけることはとても重要です。
6.4. 過去問を解く(後期:試験1週間前)
問題集を終えた後は、過去問をどんどん解きました。過去5年・10回分です。
と言ってもそのうち2回分は初期に解いたので、それ以外の8回分を。1日に1回〜1.5回分は解いたと思います。
問題集で練習を積んだ後なので、初期には解けなかったタイプの問題も結構解けるようになっています。
ただし、区間推定や検定の分野は記憶が曖昧な部分があったので、そこはやはり教科書や統計WEBで復習しました。
普段はあまりやらないのですが、単語カード的なものに公式等をまとめてみたりもしました。何かしらの方法で整理しないと、曖昧なまま本番を迎えて自滅しそうな気がしたので。単語カード自体は作った後そんなに使いませんでしたが、作る行為自体が知識を整理する役に立ったので、一応意味はあったなと思います。
過去問が残り3回分くらいになった頃にはかなり正答率も上がっており、34問中30問程度は平均して正解するようになってました。
流石にここまでくれば合格するだろうという安心感が得られたので、過去問を全て解き終えてからは間違えた問題の解き直しや、定義・公式の復習を自分のペースでのんびりと行いました。
これが試験までに行った勉強の全てです。
7. 受験
そして、ついに、来る9月12日にCBTで受験し、合格しました。
問題について語ることはできませんが、せっかくなのでCBTの特徴と、統計検定に対する不満辛辣な意見を述べて、この記事のまとめとします。
7.1. CBTの特徴
CBTの問題はペーパーテストと異なり、一問一答的な問題が多いです。1つの問題で2つのことを聞かれるような設問は、終盤に畳みかけて数問出題されます。
時間はペーパーテストと同様に90分あるので、かなり余裕はあります。
私も60分〜70分の間で解き終えたので、見直しの時間は20分以上ありました。
ただ、この見直しがくせ者で、ペーパーテストに比べてどうしても見直ししづらい感じがします。一応「あとで見直しする」的なチェックを回答中につけることができるのですが、そのチェックをうっかり忘れることもありますし、当然そのチェックを付けていない問題にも間違いはあります。
ペーパーテストのように全体をパラパラとめくって思い出しながら見直す、みたいなことができないのが辛いところですね。
ただ、時間に余裕はあるはずなので、焦らずゆっくり見直しをすることをおすすめします。
私はもう早く結果が知りたかったので、チェックを付けた問題のみを点検して、解答を修正し、係の人を呼びました。
結果的に8割弱の点数だったので、もっとちゃんと見直しておけばよかったと思いました(笑
7.2. 統計検定に思うこと
統計検定では電卓を使用することができるのですが、持ち込める電卓には厳しい制限があります。
公式サイトの表現を引用すると
四則演算(+-×÷)や百分率(%)、平方根(√)の計算ができる一般電卓又は事務用電卓
とあります。
つまり、ごく普通の電卓しか使えないのです。
関数電卓は使えないのです。
これ意味わからなくないですか。
今の時代、統計的な計算するときに普通の電卓使うやつがどこにいるんですか?
平均とか分散とか標準偏差とか、信頼区間とか求めたいときに普通の電卓しか使えないようなシチュエーションってあります?
ないですよね。メモリ機能とか、開平機能とかを使ってちまちま計算することに何の意味があるんでしょう。
関数電卓を使って簡単に計算できる方がいいですよね。便利に計算できるツールの使い方を知ることの方が余程有益だと思います。
こういう謎の電卓スキルを上げさせるような苦行を受験者に強いるのはいかがなものかと思いますね。
勉強をしているうちに、少しずつ統計って面白いなと思えるようになっていったのですが、 電卓でちまちま計算している時間だけは苦痛でした。
過去には準1級と1級の試験で関数電卓の使用が認められていたそうなのですが、2017年度から使用禁止になったということです。これはもう改悪としか言いようがないですね。
工学部出身の私としては、関数電卓はもっと世の中に広まるべきだと思いますし、こういう検定でも積極的に許可されるべきだと思います。
あと全然関係ないですが、そろそろ散布図だけ与えて適切な相関係数を選べという問題はやめてほしいです。
現実的にそんな場面ありません。
「散布図を出力したんだけど、相関係数は求めなかったんだ。ちょっと勘でどれくらいの値になるか当ててくれない?」みたいな状況ないでしょ。
散布図出力できるツールがあるなら相関係数も一緒に出せよ!一瞬だよ!と思います。
8. おわりに
長々と語ってしまいましたが、統計検定について私がいいたことはほぼ出し尽くしました。
何故だかすごく充実感と達成感があります。
コロナ的な感染症的な物が流行りはじめて数ヶ月経つ昨今、統計検定もペーパーテストが中止になっており、CBTでの受験がメインとなりつつあります。
CBTは自分で受験のスケジュールを調整できるのが1番のメリットだと思いますので、興味のある方は受験日を先にサクッと決めて、勉強に取り組んでみてください。
そのときにこの記事が役に立てば嬉しい限りです。
追伸:CBTの受験会場は地域によってはめちゃくちゃ少なかったりしますのでその点ご注意ください。
詳しくはこちらのページをご参照ください。